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武に安らぐ

武に安らぐ

太気拳の楽しさは「仮面ライダーごっこ」ともう一つあります。
それは
「何も求める必要のない安らぎ」
とでも表現すればいいでしょうか。

私はトンカツが大好物です。
昔チベットで遭難したことがあり、なんとか生還した関西空港で最初に食べたのがトンカツだったんです。

以前は「トンカツを食べているときが最高に幸せ」と思っていました。
ですがよくよく自分の心を観察してみると、食べているときは飲み込んだとたんに次の一口を求める欲求がわき、ひどいときにはトンカツがまだ口の中にあるのにキャベツが食べたくなったりと、心が大騒ぎをしています。
生じた欲求がすぐに満たされるので、これはこれで幸せなのですが、どうもせわしない。

それよりも食べることに満足して「何も食べたくない」と感じている状態のほうがずっと心地いい、ということに気づいたのです。
これが満腹で苦しい、と感じているようでもいけません。

食べ物について全く考える必要がない状態。

食べたい、とか食べたくない、とか、そんなことを考えもしない状態が「食欲」についてはもっとも解決された、心地よい状態でした。

「あー、満足!みたされたー!」と思っている状態よりも、それさえも思っていない状態こそが最高、ということです。
自分の心をよく観察してみると、満足というのはそれがなくなったときの不安が含まれているように思えるのです。

太気拳の稽古、特に立禅をしていると「何も求める必要のない安らぎ」をしばしば経験することになります。

今は食欲を例にとりましたが、全てにおいてそのようになります。
立禅を長時間すれば体調によってはどこかに痛みが生じることがあります。
蚊に刺されて痒くなることもあります。
それらに対しても取り除こうと格闘するのではなく、それを知覚していながらも、それはそれでいいか、という感覚です。

立禅をしていると胸のつかえがおりるような、頭をしめつけているものがスーッとゆるまるような、身体のゆるみと同時に心の解放感があり、勇気が湧いてくるような、スッキリとした本当に気持ちのいい時間が訪れます。
これらは「気持ち」のみを表現しているのではなく、血流の拡大や筋肉のゆるみなど、実際に身体に生じている生理的な変化です。
立禅は身体に変化を与え、それが心(意識)の変化を引き起こし無理なく自分の可能性を引き出すことができるのです。

「何も求める必要のない安らぎ」とは「比較しない」ということと関連します。
強さという感覚は相対的な比較では決して充足させることはできません。
Aさんに勝ってもBさんにはまだ負けている。Bさんに勝ったらCさん。これが永遠に続きます。
「人とではなく、昨日の自分と比べるんだ!」とも言いますが比較していることに変わりはありません。
昨日の自分と比べるのであれば、年齢を重ねるごとに身体機能は衰えていきます。

そうではなく、真に強い、ということは強さということを考えない(=比較しない)状態なのかもしれません。
老婆を相手に、赤ちゃんを相手に「こいつと俺、どっちが強いだろうか?」なんて考えません。
健康な人は病気を考えないのも同じです。

比較、つまり相対の世界から絶対の世界へシフトすること。

もちろん競争や上昇志向が悪いといっているのではありません。
むしろそれによって世界は発展してきましたし、私自身も「いい」学校に行こう「いい」会社に入ろう、とそれなりに競争社会で頑張ってきました。

立禅は身体に変化を与え、それが心(意識)の変化を引き起こし無理なく自分の可能性を引き出すことができるのです。
何も求めることのない(=比較しない)安らぎ 武術の稽古を通じ、徐々にそんな時間が増えてゆきます。

私が提案したいのは比較や競争を否定することではなく、それにこだわりすぎずバランスをとって軽やかに生きてはどうでしょうか、ということです。

そういうことを理屈で理解するのではなく武術の稽古を楽しんでいるうちに、体感を通して自然に身につけていくのです。
命をかける登山家が哲学的な境地に辿り着くのと同じようなものかもしれません。
武術は生命のやりとりの技術として発展してきたのですから、それを探求するうちに自然とそのようになってゆきます。

相対的な比較をしない、ということは護身の場においても重要です。
恐怖心はどこから生まれるのか。
相手と比較して自分の方が弱い、不利だと思う心に一因があります。
命を失う、という「所有しているものを失う恐れ」もあるでしょう。

何も求めることのない(=比較しない)安らぎ

武術の稽古を通じ、徐々にそんな時間が増えてゆきます。

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