それって感想ですよね

June 6th, 2025

「それって感想ですよね」
相手を論破することで有名な方の名言です。
「それはあなたが勝手に考えたことで事実ではないでしょ」
というようなニュアンスでしょうか。

これは禅的な言葉にも聞こえます。
辞書によると「感想」とは、
「ある物事に対して心に生じた、まとまりのある感じや考え。所感」
とあります。

今、読んでいる「この文章」。
これを「このぶんしょう」と読み、理解された意味も、ただの感想です。

「この文章」を「このぶんしょう」と読めたのは日本語教育があったからです。
他にも「この文章」を「画面上の液晶の点の集まりだ」とみることもできます。
ですがこれらは全て感想、つまり「この文章」に対して心に生じた、まとまりのある考えにすぎません。
生まれたての赤ちゃんは「この文章」を文字とも液晶の点とも思わないでしょう。

そして「この文章」を「私が見ている」というのも「物事に対して心に生じた、まとまりのある感じや考え」です。
「この文章」を「私」が「見て」いるというのは事実に対しての感想であって事実ではありません。
これが理解されにくい内容かもしれません。
本当は目の前の様子がずーっとあるだけです。
なんでもないことです。
ここに無我の様子があります。

「この文章」に対しての「このぶんしょう」、「液晶だ」、「私が見ている」などは感想であって、事実・それ自体ではありません。
だけど「この文章」に対したら「このぶんしょう」というのが事実、真実だと思ってしまう。
この「自分の心に生じた、まとまりのある感じや考え」が「この文章」の事実だと思ってしまうところに迷いの根っこがあります。

この話には続きがあります。
「この文章」を読んで、「このぶんしょう」、と思ったこと、理解されたこと、それもまた実物です。
自分の心に生じた考えだから誤りだ、ではなく、それはそれで実物です。
ずーっとそうなっています。
みんなそのまんま、です。
ここをはっきりさせることが修行です。
そしてその修行のやり方が何百年も、きちんと伝承されています。

台湾にて、認識のゆらぎ