中心力

September 8th, 2025

武術において最優先事項は相手を倒すことではなく、自分を護ることである。
そしてその力の物理的な源泉は外に放出する力ではなく、中心に向かう力である。

中心に向かう力とはバランス力だ。
自分の外に向かう力と中心に向かう力があるとき、中心への力が優っていればバランスが維持される。
ヤジロベエを軽く揺らすと揺れが少しづつ小さくなり、ついには中心で静止する。
だが限界を超えて強く揺らせば、中心に戻れず倒れてしまう。
これが外へ向かう力が中心に向かう力を超えてしまった状態だ。
綱渡りで綱から落ちるのも、中心に戻る力よりも外に向かう力が優勢になってしまった結果だ。

立禅では、腕を押されたとき押し返すのではなく、腕の中のボールを守るようにと指導される。
すると弾力を持って相手の力に耐えることができるのだ。
これも同じことだ。相手を押し返していると、相手が力を抜けば前に倒れてしまう。
相手を押し返すのではなく、自分がバランスを保って立ち続ければいい。

単に相手を強く押すことだけを考えるならば、身体を斜めに倒して相手にもたれかかってしまえばいい。
これが自分の外に向かう力である。
だがそんな力は相手が動けば崩れ倒れてしまう。
そうではなく、相手にどんなに押されてもゆらゆらと立ち続けることができるあり方を求めたい。
そうしているうちに、相手が勝手にバランスを崩して一人ゴケするのが理想だ。

外に向かう力ではなく中心への力。
中心力である。
これすなわちバランス力である。

さかしい、というのが気になるが