前拳のコツ③
August 8th, 2025
今回は108ある前拳のコツのうち、その③を紹介しよう。
コツ①当たる瞬間、前脚が浮いている
コツ②前に出ながら打つ
も参考にされたい。
前拳のコツその③は、
「腕と脚は同時に出る」だ。
前拳は前に出ながら打つ。
手を出せば触れる距離で戦うのは危険だ。
その距離では相手の攻撃を反射神経で避けることはできず、経験から得られた高度な予測能力が必要とされる。
だから互いに自然と間合いをとり離れたところでの攻防となる。
離れた間合いから攻撃に移るとき大切なのは、「近づいてから打つ」のではなく、「近づきながら打つ」という感覚だ。
人の目は優れたもので、動くものには反応が速い。
ボーッとしていても視界の端で虫などが動いたら気づくものだ。
森を見ていても何かが動くと目は敏感に反応する。
動くものに反応するのは野生時代からの本能なのだろう。
組手をしていても、こちらの動きに相手は敏感に反応する。
腕でも脚でも、動けば相手の反応は始まるのだ。
だから身体が動き出してから拳が相手に届くまでの時間を最短にする必要がある。
そのためのコツが「腕と脚は同時に出る」ということだ。
間合いを詰めるために脚を動かせば相手は必ず反応する。
どうせ反応するのだから、腕も同時に動かそう。
一歩踏み込んで当たる間合いに入ってから腕を動かして打つのでは遅すぎる。
当たる間合いに入ると同時に拳は既に相手に当たっているのだ。
突きの力は脚や腰など下半身から発生する、ということはよく聞くと思う。
武禅会でもそれが基本にある。
だが実際には脚が動いて腰が動いて、と順番にやっていると必ず相手に反応されてしまう。
反応されずに当てるためには全身がほぼ同時に動かねばならない。
地面からの力が拳にまで流れる様子を、水が流れるホースに例えてみる。
練習段階の動きは、ホースの中に水がなく蛇口をひねると数秒後に放水されるイメージだ。
それが熟練してくると、ホースに水が満たされており蛇口をひねるとホース内の水が押し出されて時間差なく放水される、というようになる。
この感覚を、水ではなく気が身体に充満しているような、と表現することもできる。
「腕と脚は同時に出る」
この感覚は、熱い鉄板に触れた時のような、激烈な神経の発火を伴う全身の協調された働きなのだ。

普段は埼玉、夏だけ利尻のパイ屋さん。素敵なライフスタイル。